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【全曲レビュー】B’z 4thアルバム『RISKY』感想|初のミリオン達成!「危険な賭け」が生んだ初期の最高傑作

B'z

はじめに:B’zが「天下」を獲った瞬間

1990年11月7日。日本の音楽シーンにおいて、B’zという名前が不動のものとなった日がやってきました。4枚目のアルバム『RISKY』のリリースです。

このアルバムは、B’zにとって初のオリコンチャート1位を獲得し、初のミリオンセラーを記録した記念碑的な作品です。前作『BREAK THROUGH』までの「知る人ぞ知る実力派ユニット」から、「誰もが知る国民的アーティスト」へと一気に駆け上がった瞬間でした。

しかし、単に売れただけではありません。タイトルの『RISKY(危険)』が示す通り、本作は彼らにとって大きな挑戦作でもありました。デジタルビート主体のダンスロックから、生音を取り入れた本格的なハードロックへの移行。そして、ニューヨークとロンドンでのレコーディング。

この記事では、B’z初期の集大成とも言える名盤『RISKY』を全曲レビューと共に徹底解説します。なぜ彼らは順風満帆な時期にあえて「リスク」を冒したのか? その答えは、30年以上経った今聴いても色褪せないサウンドの中にありました。

なぜ順風満帆な時期に「危険(RISKY)」を選んだのか?

前年のミニアルバム『BAD COMMUNICATION』の大ヒットにより、B’zの知名度は飛躍的に向上していました。そのまま同じ路線の「デジタル・ダンスロック」を続けていれば、安泰だったはずです。

しかし、松本孝弘はあえて舵を切りました。「ロックバンドとしてのB’z」を確立するために、デジタルな打ち込みサウンドと、人間味のある生演奏の融合を試みたのです。

本作のサウンドは、プロデューサー明石昌夫による緻密なプログラミングは残しつつも、ドラムやベースに海外の一流ミュージシャンを起用したり、ギターのアンプサウンドをより生々しく録音したりと、明らかに「音の厚み」が増しています。

「守りに入らず、常に変化し続ける」。 このB’zの基本姿勢(アティチュード)が初めて明確に表れたのが、この『RISKY』というアルバムなのです。結果として、この「危険な賭け」は大成功し、幅広い層のリスナーを獲得することになりました。

【全曲レビュー】海外録音が生んだ極上のサウンド

それでは、全10曲(インスト・語り含む)をレビューしていきます。一曲一曲がシングルカットできるほどのクオリティを持った、まさに「捨て曲なし」の名盤です。

1. RISKY

アルバムの幕開けを告げる短いインストゥルメンタル曲です。重厚なシンセサイザーと、松本の唸るようなギターが絡み合い、これから始まる「危険なショー」への期待感を極限まで高めます。この数十秒だけで、前作までとは音のスケール感が違うことが分かります。

2. GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-

前曲から切れ目なく繋がる、ファンキーでヘヴィなロックナンバー。この曲の最大の特徴は、デジタルビートの冷徹さと、松本の泥臭いギターリフの対比です。ライブではさらにハードなアレンジで演奏されることが多く、稲葉浩志のシャウトが炸裂する定番曲として愛されています。「不屈のLOVE DRIVER」というサブタイトルも、当時の彼らのハングリー精神を表しているようです。

3. HOT FASHION -流行過多-

タイトル通り、流行に流される人々を皮肉った歌詞が面白い、アップテンポなダンスロックです。「カライ、カライ、カライ、ツライ…」というリズミカルなサビは一度聴いたら耳から離れません。社会風刺を織り交ぜつつも、決して説教臭くならず、あくまでエンターテインメントとして昇華している点に、B’zのバランス感覚の良さを感じます。

4. Easy Come, Easy Go! -RISKY Style-

先行シングルとして大ヒットした、初期B’zを代表する一曲です。アルバムバージョン(RISKY Style)として収録されています。 この曲の衝撃は、「ダンスビートを捨てた」ことでした。アコースティックギターを主体としたフォークロック調のサウンドは、当時のB’zファンにとって大きな驚きでしたが、「愛のままにわがままに…」などのちのヒット曲に繋がる「大衆性」を獲得する決定打となりました。「踊ろよLADY」という歌詞の親しみやすさは、今聴いても心に響きます。

5. 愛しい人よGood Night…

B’zのバラードの中でも、特に完成度が高いと評価される一曲です。ピアノとストリングスを中心とした美しい旋律に、稲葉の伸びやかなボーカルが乗ります。激しいロックの後にこの曲が来ることで、アルバム全体の緩急が見事に付いています。後にシングル「LADY NAVIGATION」のカップリングとしてリメイクされるほど、メンバーにとっても思い入れのある楽曲です。

6. HOLY NIGHTにくちづけを

タイトルから分かる通り、クリスマスソングです。しかし、甘いだけの曲ではありません。シンセサイザーを多用したキラキラしたサウンドの中にも、しっかりとしたビートがあり、B’zらしいポップロックに仕上がっています。発売日が11月だったこともあり、当時の冬のドライブデートでヘビロテされたであろう、隠れた名曲です。

7. VAMPIRE WOMAN

個人的に、このアルバムで最も「カッコいい」と推したいのがこの曲です。デジタル・ハードロックの完成形とも言えるサウンドで、攻撃的なギターリフ、妖艶な歌詞、そしてサビの爆発力、すべてが完璧です。「吸血鬼のような女性」に翻弄される男を描いた歌詞は、稲葉浩志のセクシーな魅力が全開。ライブでの演出も派手で、ファンの人気が非常に高いナンバーです。

8. 確かなものは闇の中

ジャズやファンクの要素を取り入れた、大人っぽい雰囲気の楽曲です。夜の都会を彷彿とさせるサウンドで、松本のギターソロも非常にテクニカルかつムーディーです。派手さはありませんが、アルバムを通して聴くと、この曲が持つ「深み」がクセになります。B’zの音楽的な引き出しの多さを証明する一曲です。

9. FRIDAY MIDNIGHT BLUE

タクシー運転手の視点で描かれた、ユニークな歌詞のロックナンバー。「金曜日の深夜、様々な客を乗せて走るタクシー」という設定で、人間模様を皮肉たっぷりに描いています。この曲における稲葉の歌詞は、まるで短編小説や映画を見ているような具体性があります。「たどり着いたのはいつもの6畳一間」というオチまで含めて、ストーリーテリングの才能が遺憾なく発揮されています。

10. It’s Raining…

アルバムのラストは、雨の音とピアノ、そして稲葉の「語り(スポークン・ワード)」だけで構成された異色作です。メロディを歌うのではなく、独白のように言葉を紡ぐスタイルは、当時のJ-POPでは非常に珍しい手法でした。 歌詞カードには掲載されていない言葉もあり、ヘッドホンで聴くと、まるで稲葉が耳元で囁いているような臨場感があります。アルバム『RISKY』という物語のエピローグとして、静かな余韻を残して終わります。

稲葉浩志の作詞が「短編小説」に進化した理由

『RISKY』のもう一つの大きな特徴は、稲葉浩志の作詞スタイルの進化です。

前作までは、どちらかと言えば「音に乗せるための言葉」や「抽象的なカッコよさ」が重視されていました。しかし本作では、「FRIDAY MIDNIGHT BLUE」のタクシー運転手や、「HOT FASHION」の流行に踊らされる若者など、具体的なキャラクターや情景描写が格段に増えています。

これは、B’zがより広い層(大衆)に届くようになったことで、聴き手が「自分のことだ」と共感できるリアリティが必要になったからかもしれません。また、稲葉自身が海外レコーディングを通じて視野を広げ、日常の風景を切り取る観察眼に磨きがかかった結果とも言えるでしょう。

「B’zの歌詞は面白い」。そう言われるようになったのは、間違いなくこのアルバムからです。

まとめ:30年経っても色褪せない「冒険」の記録

B’zの4thアルバム『RISKY』について振り返ってきました。

初のチャート1位、ミリオンセラーという記録的な成功の裏には、安住を拒否し、新しいサウンド(生音との融合)へ挑戦する「RISKY」な姿勢がありました。

  • デジタル・ビートとハードロックの完璧な融合
  • 「Easy Come, Easy Go!」に見る大衆性の獲得
  • 短編小説のような深みのある歌詞世界

これらが揃った本作は、初期B’zの集大成であり、同時にその後のB’zの黄金時代(IN THE LIFE、RUNなど)への扉を開いた重要な鍵(キー)でもあります。

もしあなたが「B’zの古いアルバムを聴いてみたいけど、どれから聴けばいいか分からない」と迷っているなら、まずはこの『RISKY』をおすすめします。ここには、日本一のロックバンドへと駆け上がる若き日の二人の、恐れを知らないエネルギーが真空パックされています。ぜひ、その「危険な魅力」に触れてみてください。

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